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【NARUTO -ナルト-】努力の天才ロック・リーを全力で考察【BORUTO -ボルト- 登場記念!】

 

 

 NARUTOが全盛だった頃、私はちょうど中学生。直撃世代です。

 推しメン(当時はこんな単語すらなかった)はサスケとハクとカカシ先生という典型的すぎる美形厨だった私の人生は、中忍試験編が始まり満を持して登場してきたあるキャラによって狂わされたのでした。

 

 はい、努力の天才ロック・リーです。

 

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 (右:NARUTO 20巻 180話、左:アニメNARUTO -ナルト- より)

 考察などとタイトルにうたってありますが、ただひたすら個人的な燃え(萌え)ポイントを語っているだけです。

 こんなこと考えてる奴もいるのね〜くらいに軽く読み流していただけたら幸いでございます!

 

 

 

概要。「努力の天才」ロック・リー

 

 忍者のマンガなのに忍術の類を一切使わず殴る蹴るだけで戦うという、最高にロックな精神のド根性キャラ。

 ギリギリ感あふれる熱血ギャグ落ちこぼれが努力の力で天才を打ち負かす」というシリアスなテーマが見事に同居した、NARUTOの裏主人公といっても過言ではないマスコット的存在です。

 2012年には彼を主人公としたスピンオフ作品までリリースされています。

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ロック・リー忍伝 DVD 第17巻 より)

 

 

 外観。「ダサいのにカッコいい!」至高のギャップ燃え

 

  オカッパ + まゆ毛 + まん丸の目 という3つの要素がアイコンとして秀逸で、誰が描いてもロック・リーと認識されるデザインはインパクト絶大。デフォルメとの相性も抜群です!

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(アニメNARUTO -ナルト- より)

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↑カエルのような丸い目は『忍空』の風助(※1)を彷彿とさせます。(アニメNARUTO -ナルト- OPより)

 一人だけ画風がぜんぜん違うというか、露骨に濃ゆい熱血ノリやガイ先生とおそろいのタイツ風コスチュームもあいまって初見の印象では完全に "色モノ" 状態。

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僕のヒーローアカデミア1巻1話、7話より)

 なのにサスケをぶっ飛ばすくらい強いときて、この時点ですでにギャップがヤバイ。仮にも主人公のライバルキャラであるサスケを、悪役とか神とか師匠とかいうわけでもないいちサブキャラのロック・リーが実力で圧倒しているという展開が意外すぎて、読んだ当時はかなり驚きました。

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NARUTO 5巻 37話より)

 古典的な美形を表すマンガ記号は「切れ長の目」、現代風イケメンの記号は「サラサラの前髪」などですが、通常時のロック・リーは完全にそれと正反対です。

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(アニメNARUTO -ナルト- より)

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 NARUTO 5巻 37話より)

 ただ、その記号的さゆえか、ロック・リーのデザインはシーンごとに全く違った印象を与えます。緊迫したシーンでは険しい表情になり目と眉がくっついて、ドラゴンボール的イケメンの面持ちを得ます。雰囲気もグッとシリアスになり、もはや別人。

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 ↑ 戦闘中の表情は真剣そのもの。(アニメ NARUTO疾風伝 より)

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↑ 躍動感あふれる空中での戦闘シーン。ふつうにカッコいいデザインに見えます。(NARUTO 5巻 37話より)

 普段は重たいヘルメットのようなオカッパ頭が激しい動きで振り乱れ、ピッタリとした衣装は体の線が分かりやすく、もはやアクション入った時の見映えとギャップのために考え出されたとしか思えないデザイン。

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 (アニメ NARUTO -ナルト- より)

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 NARUTO 24巻 209話 より)

 何が凄いって、分かりやすい外観の変化(髪や目の色が変わる等)は無いのにオカッパ頭がヴィダルサスーンに見えてくるほどの印象ギャップですよ。

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60年代ファッションシーンで一大革命を巻き起こしたサスーン・カット。「振っても元に戻る」というテレビCMのキャッチフレーズが印象的。

 しかも話が進むにつれ実際の性格は誠実、謙虚、弱い者に優しい、小動物に好かれる、ひたむきな努力家で、見かけによらず真面目なキャラであることが分かります。

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NARUTO 6巻 52話 より)

 ロック・リーの魅力の80%以上は、この外観と中身とのギャップにあると言ってもあながちウソではない気がします。このギャップにやられたファンは多いのではないでしょうか。

 

 

ロック・リーのモデルとなった人々 

 

ブルース・リー

   ロック・リーという名前は、伝説の香港カンフー映画スターブルース・リー李小龍:リー・シャオロン)のもじりと思われます。「ブルース」を音楽ジャンルとしてとらえて、そこを「ロック」に置き換えたわけですね。(ロックはブルースから、そしてメタルはロックから派生した音楽といわれています。)

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(映画「燃えよドラゴン」より)

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↑↓(映画「死亡遊戯」より)

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↑ ロック・リーのトレードマークとも言えるあのツナギ風の衣装は、ブルース・リーの有名なトラックスーツへのオマージュか…?

 彼が日々こなしていたトレーニングメニューというのが、キック2000回、パンチ5000回、ウェストツイスト360回、シットアップツイスト100回、レッグレイズ100回、ラーニングツイスト200回……これはほんの一部だそうです。

 トンデモな逸話も多く、動きが速すぎて24fpsではフィルムにちゃんと映らなかった、サンドバックを蹴りで破裂、素手の指突きで缶に穴、腰の仙骨神経を損傷してしまい医者は武術を続けることは不可能と診断したが驚異的な回復を見せ5本の映画に出演、などなど…。

 リアルロック・リーというか、ブルース・リー本人がそもそもマンガみたいな超人でした。

 

ジャッキー・チェン

 ロック・リー片手を腰の後ろに添え、もう片方の手の甲を相手に向ける 独特の構えポーズ(※2)酔拳などの技は、同じく香港映画スターのジャッキー・チェンをパロディしたものと思われます(アクション俳優のジェット・リーも同じようなポーズをしますが、手の角度が微妙に違うのと、相手を挑発するための仕草も入ってるのでたぶん違います。)

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↑ ジャッキーが腰の後ろに左手を当てているのは、チャイナ服の長い前垂れを左手でたくし上げているため。(左: 映画「酔拳2」、右: NARUTO10巻82話 より)

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酔拳の構え(左上)。逆立ちしたまま両足で蹴りまくるジャッキー(左下)。NARUTOでも似たようなシーンが…。(左側:映画「酔拳2」、右側: NARUTO10巻82話 より)

 映画『酔拳2』のジャッキーはモロなので興味ある方はぜひ確認してみてください!とくにVS君麻呂戦のリーの動きがモロです!!

 

ブルース・リーだけどジャッキーチェン? 

 ロック・リーは香港映画の2大アクションスターにインスパイアされたキャラクターですが、2人の俳優は全くと言っていいほど正反対です。

 名前の由来ともなったブルース・リーは、目にも止まらぬ(比喩とかでなく、ガチで見えない)高速の突きや蹴りで敵を粉砕し、"己の肉体を武器化" する真っ向勝負の武闘家スタイル。戦闘時の雰囲気はシリアスそのもので、ロック・リーのコンセプトはこれらの点と非常に似通っています。

 ブルースはガチンコバトルの似合う熱い役柄ながらも、気の強い不敵な表情が多いです。この辺はむしろ息子のメタル・リーのキャラが近い気がします。(まあブルースは実際めちゃくちゃ強かったからこそコレがサマになってたわけですが。)

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↑ 基本、真顔なブルース・リー。敵を挑発するような微笑が印象的。(映画「死亡遊戯」より)

 一方のジャッキー・チェンは真剣に戦っているシーンですら可笑しく「てんやわんや」という言葉がまさにピッタリ。コミカルなお笑いノリの似合うチャーミングな俳優で、普段のリーのイメージはこちらの方が近いですね!

 ただし戦い方はリーと真逆で、ジャッキーは1対多数がもっぱらの  "環境を武器化"  するスタイルです。椅子、ロープ、道ばたの木、自転車で荷物配達中のおじさん等々、身の回りにあるモノは何でもかんでも利用します。一番すごかったのは入浴中に襲撃されたヒロインのバスタオルを引っぺがし敵が女性の全裸に気を取られた隙に倒すという荒技。しかもヒロインに殴られ「作戦だよ!」と逆ギレする潔さ。

 個人的に、ロック・リーの息子とされるメタル・リーはジャッキー・チェン寄りの、ドタバタ乱戦が得意な実践的武術・ケンカ殺法スタイルでも面白いかも?……と、チラッと思いました。 

 

 

キャラクターコンセプト。「スーパーサイヤ人へのアンチテーゼ? 」

 

 ロック・リーを語るうえで外せないのがなんといっても必殺技の裏蓮華。というより、重要なのはその前段階で行われるリミッター外し八門遁甲」です。

 ここで原作者・岸本斉史先生の孫悟空ではなくクリリンの立場の人を主人公にしたい」という旨の発言を思い出しつつ、八門遁甲の体内門を解放した時のリーの姿に注目してみます。

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 NARUTO 10巻 85番 より)

 髪は逆立ち、目つきは鋭く変わって、衝撃波のようなオーラを身にまとっています。そして何より、これ自体は攻撃技ではなく "戦闘力アップ" の段階だということ。

 明らかにスーパーサイヤ人へのパロディ・オマージュです。

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(左: NARUTO 10巻 85話、右: ドラゴンボール 34巻 408話 より)

 エリート一族の血を引いているとか生まれながらの強さを持っているわけではない クリリンの立場の人」であるロック・リーを、あえてスーパーサイヤ人にしちゃう。

ここに作者のマンガに対する思いというか、 オレはこういうのを描いてやるぞ!!!」という気迫のようなものさえ感じとれます。

 

 

5.戦闘スタイル。「忍術の使えない忍者」

 

忍術・幻術を一切使わない

 ロック・リーの個性をなにより強固なものにしているのが、体術のみで戦う」というド根性とクソ度胸。そもそも忍者のマンガである本作に真っ向からケンカを売りに行くスタイルです。

 作中のどこを見回しても「忍術・幻術を一切使わない」というキャラは他に存在しません。ガイ先生だって幻術返しや口寄せの術などを使っています。

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 (NARUTO 10巻 82話 より)

 またストーリー上、「砂の絶対防御で触れることすら出来ない」「骨格が異常に頑丈であらゆる物理攻撃を寄せ付けない」あげく「体中から尖った骨を突き出させ、殴った方にダメージ」などなど、明らかに相性の悪すぎる敵にぶち当てられ、その度にボロボロにされています。

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 NARUTO 10巻 82話 より)

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 NARUTO 24巻 211話 より)

 どんな術を使う敵が相手でも、彼は素拳による直接攻撃のみ(※3)を武器に立ち向かいます。この地味すぎる戦闘スタイルが根幹にあるからこそ「裏蓮華」のような超必殺技にも説得力があり、その愚直な性格とも絶妙に引き立て合って読者の共感を誘います。

 しかもベースに熱血ギャグがあり、顔がいわゆるイケメンではなく主人公でもないので、その健気なまでの真面目さひたむきさが全く嫌味にならないのです

 多分ですが、NARUTOを読んでいる人でロック・リーに興味がない人はいても、積極的に嫌いだという人はあまりいないんじゃないでしょうか。

 

「木ノ葉流体術」と「酔拳

  ブルース・リージャッキー・チェン等へのパロディをみると、カンフーや中国拳法からの影響が強そうに思えます。しかし普段のロック・リーの戦闘スタイルは力強く直線的で、どちらかといえば日本で創始された少林寺拳法極真空手の動きに近い印象を受けます。そこはやっぱり忍者だからか?(武道を習ったり詳しいわけではないので間違ってたらゴメンナサイ。)

 設定上では、ロック・リーの体術は「木ノ葉流体術」というマンガオリジナルの架空の流派となっています。

 君麻呂と戦った際には「直線的すぎる。」と評されましたが、その弱点を、リーは常識外れのスピードでカバーしていた…と考えることもできます。だからこそ、そのスピードに対応してくるレベルの敵(君麻呂など)に当たった時はかなりキツイ。

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NARUTO 24巻 210話 より)

 そこで、「天性の酔拳使い」という追加設定がロック・リーというキャラに新たな息を吹き込んだのです!

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NARUTO 24巻 210話 より)

 ブルース・リーなのにジャッキー・チェンという洒落もきいて、彼の弱点を補う特技でもあり、この酔拳という設定は大当たりだと思いました。

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↑ この扉絵は布石か…?酔ったガイ先生に酒を勧められ断っている?かのようなロック・リー。タイトルは「リーの秘密!!」(NARUTO 10巻 82話 より)

 もともとロック・リーは、捨て身技の裏蓮華を使わずとも我愛羅の砂のオート防御をかいくぐれるほどの超人的なスピードを身につけていました。もし 日向ネジvsロック・リー戦 が実現していたとして、いくら白眼で見切ってもあれだけの速さで動き回る相手の点穴を狙って正確に突くことは難しいでしょうから、いい勝負になったはず。「目で分かっていても体が動かないんじゃ どうしようもないワケです」という台詞はサスケだけではなく、実はネジにも向けられていたことは、「打倒ネジの答えはそのハイスピードコンボ」という作中の解説や「裏蓮華はネジを倒すためのとっておき」だとリー自身が言っていることからも明らかです。

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↑ サスケにかけようとした技は「表蓮華」です。裏の方はネジにとっておくためか。(NARUTO 5巻 37話 より)

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NARUTO 10巻 85話 より)

 しかし、我愛羅には砂のひょうたんをクッションにすることで防がれ、君麻呂にいたっては(手術直後で病み上がりのハンデがあったとはいえ)素で動きを見切られています。

 結局のところ、パワーやスピードで押し通れない場面というのが必ずロック・リーの前に立ちはだかってきて、しかもどこまで大きなパワーやスピードを出せるかの限界はすでに作中で提示されてしまったのです。

 ロック・リーの強さの限界、それは八門遁甲の第八門を開くことです。

 マンガ的には、強い敵に遭遇→八門遁甲の体内門をどこまで開けるか…という展開以上に描写のしようがなく、キャラクターとしての旨味は中忍試験編でほぼ描ききった、と作者は考えていたと思います。だから八門を開く役割はガイ先生に振ったのでしょう。

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NARUTO 10巻 87話 より)

 だからこそ酔拳という新しい特技は、作中での扱われ方以上に大きな意味を持っていました。というか、柔の動き(酔拳)と剛の動き(木ノ葉流体術)とを意図的に使い分けるようになったら地味に強そうな気がします

 彼の代から木ノ葉流体術は「酔拳を併伝するようになったら面白いかもしれませんね!

 

チャクラ練れないのに、どうやって水面を歩いたり壁にはり付いたりしてるの?? という議論

  作中でのロック・リーは、水面を歩いたり「八門遁甲」のような術を使っていることからも、チャクラそのものが無い・練れないわけではないようです。

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(アニメ NARUTO -ナルト- より)

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NARUTO 10巻 90話より)

 よく誤解されていますが、「八門遁甲」そのものがチャクラを必要とする技です。つまり、の解説でいうところの "例外" です。

 忍術も幻術も使えない = チャクラが使えない  という単純な結びつけは誤りです。

 作中の解説では、"脳のリミッター・あるいは体内に流れるチャクラの量に制限を設ける『八門』という体内門を、チャクラによって無理矢理はずす・こじ開けることで、極限まで身体能力を引き出す"  ことが八門遁甲の極意とされています。

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 (NARUTO 6巻 52話 より)

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NARUTO 10巻 85話 より)

 もしロック・リーがチャクラを練れないとしたら、八門遁甲の体内門を開くことも、そこから「表蓮華」や「裏蓮華」といった技につなげることも出来ません。

 ここからは完全に妄想の域ですが、、、彼はチャクラを練って自分自身に利用することは出来るが、チャクラを忍術や幻術に変換して体外へ放出する何らかの過程で先天的な欠損があるのかも??逆にそのため、体内での利用にはロスが少なく(というか過剰適応で)八門遁甲のような特殊な術への適性につながっているんだとしたら(そういう裏設定みたいなものが仮にあったとしたら)、その人の短所は長所にもなる」という作中の台詞にも納得です。

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 NARUTO 69巻 668話 より)

 

 

6.内面の描写。「努力は必ずしも報われない?」

 

 ロック・リーは最初こそお笑い担当の中ボス的な登場をしてきましたが、後々になって当時のナンバー1、2を争うかという桁違いの実力を見せつけ、読者の予想を遥かに超える熱い活躍でNARUTO黄金期を駆け抜けました。

 しかしその道のりはというと、負ける→修行→強くなる→勝つ、のような少年マンガの王道パターンとはかけ離れたものでした。

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NARUTO 10巻 87話 より)

 中忍試験のトーナメント戦にて、彼は砂隠れの我愛羅を相手に自滅覚悟で挑むもあと一歩およばず、半ば暴走状態となった我愛羅の執拗な攻撃で手足を潰されてしまいます。それ以前に、切り札の「裏蓮華」を使った時点で彼の全身はボロボロ。この一連の大ケガは、体術以外に生きる道がない彼にとっては致命的なものでした。

 ケガで戦線離脱している間にもライバル達はどんどん力をつけ、天才サスケに至ってはたった一ヶ月の修行でリーとほぼ同質・同等の体術を身につけてしまいます。リーが少なくとも一年以上をかけて習得したものをサスケは一ヶ月です

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 NARUTO 13巻 112話)

 そのうえサスケには相手の動きを見極める「写輪眼」があるので、同等の体術を使う者としてサスケはリーの上位交換のようになってしまいました。

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NARUTO 13巻 114話 より)

 しかもさらに悪いことには、第一回戦でナルトが「日向ネジを倒してしまっています。

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NARUTO 13巻 109話 より)

 ナルトが純粋に力でネジを上回ったというよりは裏をかいての作戦勝ちという展開にした辺りに作者の良心を感じますが、そもそもリーが血の滲むような努力をしてきたのは "天才ネジを倒す" という強いライバル意識が背景にあってのこと。

 ネジを倒すための切り札として習得した「裏蓮華」による負荷で自身は戦線離脱を余儀なくされ、そのネジはあっさり他人に倒され、リーの努力とはいったい何だったのでしょうか?

 ここまで「努力」というものを徹底的に打ちのめされ、ボコボコにやられたキャラが、かつていたでしょうか?

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 NARUTO 13巻 110話 より)

 ロック・リーは強いキャラであると同時に、弱いキャラであるということも忘れてはなりません。

 彼の毎回の役割はメインキャラが活躍する前の"前座"であり言ってしまえば"かませ"なのですが、ストーリー上ぜったいに勝ってはいけないシーンだからこそ、本来そうした役割は適当なギャグキャラに振ってお茶を濁すか、サッと済ませるパターンが多いです。しかし、作者はこのロック・リーだけは、真正面からぶつからせました。

 うずまきナルトとロック・リーはまるで作者の理想と投影のようです。

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NARUTO 10巻 87話 より)

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 NARUTO 9巻 81話 より)

 ナルトは「主人公はかくあるべし」の部分を担当し、読者の期待に応える。一方で、リーは「でも現実ってこうだよね」の部分を担当し、鳥山明大友克洋といった天才達の背中を追いかけてきた作者自身が投影されているように思えます。

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NARUTO 10巻 87話 より)

 ロック・リーの家柄や親兄弟に関する描写は作中に一切ありません。息子とされるメタル・リーですら、母親の設定などは一切なし。いったい、なぜ??

 「努力の天才」に血筋は関係ないからです。

 どこの家の誰の息子だろうが、その人自身が努力して身に付けた力で立ち向かうことが重要だからです。

 才能はなくとも努力して、ボロボロになって刀折れ矢尽きるまで戦ってそれでも負ける救いようのなさ、努力をしたからといって必ずしも報われるとは限らない、一生報われないかもしれない、それでも努力し続けられることのカッコよさ

 主人公として勝利をつかむ運命にあるナルトには決して振れない役割を、ロック・リーが補っていました。

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 NARUTO 69巻 617話 より)

 マンガの連載がどんな引き延ばしにあい、どんなパワーインフレが起ころうと、努力に努力を重ね懸命に走り続ける彼のひたむきなキャラクター像がブレることはありません。

 その輝きは永遠です!


 次回
【考察2】努力の天才ロック・リーが"裏主人公"であるわけへ続く

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脚注

※1: NINKU -忍空-(桐山 光侍)
 90年代を代表する少年ジャンプの看板作品。NARUTO作者の岸本斉史先生は過去に忍空の続きが読みたくてNARUTOを描いた」と本気か冗談かコメントしており、奇しくもロック・リーの顔が忍空の主人公に酷似していたのでした。

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 (アニメ NINKU -忍空- より)
 「忍空」とは、「空手」の力強さと「忍者」の素早さ・技を組み合わせた架空の武術。ロック・リーの体術が空手のような力強い動きなのも忍空からの影響…かも??

※2:構えポーズの由来
 ジャッキー映画の中で男性が着ているチャイナ服の長い前垂れの部分がありますね?戦闘になると、あの前たれを足で跳ね上げながら片手でキャッチし、素早く腰の後ろへたくし上げ、そのまま押さえておきます。そしてもう片方の手を前にかざし、低く構えます。おそらくこれがリーの構えポーズの元です。超カッコいいです。とくに映画『酔拳2』のジャッキーがモロなので興味ある方はぜひ!

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 (映画「酔拳2」 より)

※3:素拳による直接攻撃のみで戦う
 TVアニメや映画などのメディアミックス作品ではロック・リーが手裏剣やクナイなどの投てきアイテムを放つシーン、ヌンチャクや棍で戦うシーンが描かれましたが、原作ではほぼ皆無。ただカブトの持っていたデータなどから、忍具を扱う高い技術を持っていることだけが示唆されています。

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NARUTO 5巻 39話 より)
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